「今回、我が青い鳥カンパニ―が紹介するのはこの新商品です!」
背広にネクタイ、眼鏡をかけた男は部屋に詰めかけた人々に向かって叫んだ。人々に手渡されたのは一本のペットボトル。
「その名も“沖縄のおいしい水”。これは癒しの島沖縄の奥地に湧く天然水です。ぜひ飲んでみてください、他社と違って一番人間の成分に近い水なんです!」
俺は促されるまま飲んでみた。確かに他の水と違いとても美味い。癒しの島を強調する男に質問してみる。
「どうして人間の成分に一番近い水だといえるんですか?」
男は笑って答えた。
「沖縄の奥地に、虐殺があった防空壕の死体置場から湧き出た水です」
聞いた途端、俺は水を吐き出してしまった。騒がしかった部屋の中がシンと静まる。
男は嗤いながらまた話しだした。
「嘘に決まってるだろうが。これはこの大学から汲んだただの水道水だ。ネズミ講等で行われる知覚に対する主なトリックの手口の例は以上だ。…講義を続ける。」