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幸福と復讐

遅い帰宅をした彼は食卓に彩りを添えている花にすぐに気がついた。
「お、四つ葉のクローバじゃないか」
 しかし、白く咲いている花には目もくれずに物珍しそうな顔で葉を見つめている。
「えぇ、帰りにバス停の足下で見つけたから持って帰ってきたの」
 そう、星明かりに照らされ、まるで私の行動を予見するかのように佇んでいた花を気がつけば私は手にしていた。
 その時に、歯車は周り始めた……
 わたしはゆっくりとあなたの後ろへと近づいていく。
 けど、じっとクローバーを見ているあなたはわたしに気づく気配もない。
「押し花にして持ってればいいことあるかな」
「あるかもしれないわね」
 真後ろに来たわたしはゆっくりと告げる。
「それ、クローバーじゃないの」
「えっ?」
 驚いて振り向いたあなたの目は見開き、さらに驚愕の表情から恐怖へと変貌していく。
「それはシロツメクサの花だから」
 逆手に持った包丁がわたしの手から振り下ろされた……

作者(敬称略) : 白庵 | ジャンル : 現代 | コメント : 積もり積もったものが…
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故郷

 僕はこの町から逃げ出したかったんだ……
 そのために僕は、今の僕を構成する全ての
シルシを塗り替えた。名前を変え、顔を変え、
ロクでもなかった過去を全て捨てたんだ。
 生まれ変わった俺は何もか順調に、まるで
ツバサを得た鳥のように順調に、歌手として
メジャーデビューを果たしていた。
 しかし、大スターと呼ばれる存在になって
クローゼットが高級な服で溢れかえっても、
サインに群がるファンを目にしても……
 オレノココロハボクノママナンダ……
 もう逃げていられない。わだかまりを全て
日の下にさらすために俺はタクシーに乗り、
生まれ故郷へと足を運ぶ。
 そこには俺の、僕の家はもうはなかった。
 僕の過去はもう埋もれてしまっていた。
 アカツメクサ、俺の過去を埋めた花の名。
 もう、解放されたのかと思うとこの風景を
バックにした歌が心に流れ込んでくる。甘い
スローバラードが胸にしみてくる。
 タイトルは頭文字にしようかな……

作者(敬称略) : 白庵 | ジャンル : 現代 | コメント : 前回横だったので…
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