春、彼女のもとで
「お守りにしてよ。きっと幸せになれるから――」
天気予報を見ていたら、花粉情報まで教えられた。どうやら春が訪れるらしい。天気が良かったからバスに乗らずに歩いて向かうことにした。穏やかな春の光の下、僕は彼女の眠っているところに着いた。
なにかのウェブサイトでのっていた「必ず四葉になるシロツメクサ」を彼女はどうしても欲しがった。僕は偶然見つけるから四葉は幸運なんだよ、と言ったけれど、二人で幸運を育てたいの、と彼女は怒ってしまった。結局その言葉が決め手で僕は注文してしまった。
君は流星のように消えてしまったね。もう、六年も前の話だけれど。ねえ、僕だけ、幸せになってしまう。それでも許してくれるか?
胸元に入れてあるお守りの四葉のクローバーを、そっと彼女の墓石に置いて僕は彼女との別れを済ませた。
今までありがとう。もう、行くよ。
眩しい日に囲まれて、そっと目元をぬぐって僕は彼女の元から去った。
作者(敬称略) : 赤松 稔 | ジャンル : 恋愛 | コメント : はじめまして。
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