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帰ってきたヨッパライ

 その日、夫は遅い時間に帰ってきた。
「帰り、久しぶりに新堂に会ってさ。飲んできた」
 新堂というのは私の兄だ。親友である夫は私と結婚した今も兄を苗字で呼んでいる。兄から私への土産は昔よく作っていたシロツメクサの花飾りだった。手先が器用な兄はこういったのが得意だった。
 夫が少し飲むと言ったので冷蔵庫を開ける。黒い星の缶ビールを出してグラスに注いだ。
「あいつ全然変わらないのな。仕事ないくせに輝いてやがる」
「あの人、究極のニートだもの」
 私の発言に夫は笑ってグラスを受け取った。とろんとした目を見る限り今回もかなり飲んだようだ。
「そうそう。最近うちの近所に繋がる路線ができたらしくてさ、あいつバスで帰っていったよ」
「あっちも便利になったのね」
「でも次に会うのは盆だろうから、馬と牛だな」
「だったら良い茄子を用意しなきゃ」
 私は花飾りを手にそっと笑った。

 兄が亡くなって、もうすぐ十回目の春を迎える。

作者(敬称略) : (和) | ジャンル : ホラー | コメント : 初投稿です。四百字は奥が深い……
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