静かな野原
地平線の果てまで声が届くだろうと思うほど静かな夜だった。
人間たちの開発も、この野原までは到達していない。フワリと気持ちのいい風が吹いた。
「いい風ですね?」
隣に生えるシロツメクサが僕に話しかけた。静かな夜なので一人で過ごしたかったが、会話してもいいような気分になった。
「全くそうだね」
シロツメクサは、僕を嬉しそうに見上げた。
「この風の具合なら、バスが走るかも知れませんよ?」
「バス?」
「ええ、バスです」
僕は彼を見つめた。何のことなのだろう。
「皆さんが寝てるときに見たんです。光り輝くバスが星空を走るのを」
「ふぅん」
「それはそれは綺麗でした」
目の前のシロツメクサは、排気ガスの吸いすぎでおかしくなったのだと思った。
「あ、ホラ、あそこですよ」
彼が指差す先で光が走った。それは満点の星空から落ちてきた綺麗な流れ星だった。
バスという例えもいいなと僕は思った。
作者(敬称略) : 夏後冬前 | ジャンル : 現代 | コメント : 「宮沢賢治みたいだね」を入れたかったです
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