愛の代償
『星夜くん、好きよ』
少女の可憐な笑みはシロツメクサのように純白だ。潤んだ桜色の唇で囁く。
『優しくして……初めてなの』
「恭、入るよ」
デリカシーの欠片もない声が闖入する。思わぬ事態だ。
「また卑猥なゲーム?」
お袋の顔には嫌悪と諦めが浮かんでいた。イヤホンからの喘ぎ声が急速に色褪せる。
「勝手だろ」
「ゲーム代は誰の稼ぎ?」
唐突に頭に血がのぼった。十円単位のバス代だってケチる、このクソばばあが!
「勝手に生んだのはお前だ!」
「お前は養子だよ」
……。
「養子って」
「知る必要はない」
母と慕った女の背後から、スーツの男が音もなく現れた。
抵抗もあえなく、ねじ伏せられる。その弾みで抜けたイヤホンから、あられもない音声が響き渡った。
「くそ、放せ! お袋、助けてくれ!」
「黙れ」
注射のせいで意識が白く霞む。元お袋が、男から何かを受け取っている。
『ダイスキ』
ずっと口にできなかった本心を言ったのは、ゲームか、俺か。
作者(敬称略) : 種原歩美奈 | ジャンル : サスペンス | コメント : ニートの悲劇
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