語り
僕達はモノトーンに染まった、静かな部屋にいる。窓の外には何も遮るものがない青空が広がり、子鳥たちの愉快な会話が聴こえてくる。
昼近くになるといつも、僕はそわそわして時計が気になってしかたがなくなる。お腹をぺこぺこに空かせた君の泣き声が聴こえるような気がして、仕事に手がつかなくなってしまうからだ。
君のお母さんが大きなバックを抱えて出て行ったときは正直途方に暮れてしまったけれど、僕はナミさん――昼間君の面倒を見てくれるお姉さんだ――の助けを借りて、なんとかやっている。それは決して恵まれているとは言えない君の人生において、数少ない幸運だと思う。
「部屋の鍵は置いていくわ。あなたとの繋がりはもう、随分前に途切れてしまっているのだから」
と言い残して彼女は去ってしまった。
けれども彼女は君を残していき、今では君が僕とナミさんとのキーとなっている。
だから、もう一度目を開けておくれ。お願いだよ。
作者(敬称略) : good | ジャンル : 現代 | コメント : 初投稿です。
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