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修羅場

 俺の体内時計と授業終了のチャイムが同時に鳴る。教室を飛び出す。クラスメートたちが遅れて俺に続いた。リノリウムとスニーカーのこすれる音が廊下にけたたましくこだまする。
 別のクラスの一団が俺たちに合流した。背後から数人分の泣き声とうめき声が聞こえてくる。うまくまざれなかったヤツがつまづいて周囲を巻き添えにしたらしい。たまにある。俺は振り返らない。世の中は弱肉強食なのだ。強く、速く、幸運な者だけが獲物を手に入れられる。
 目的地が見えてきた。いつものようにごった返していたが、俺の獲物はまだ残っていた。一人きりでぽつんとしている。ラッキー。つぶやきと共にラストスパートをかけ、トップに躍り出る。
 身請け料の百円を、胸ポケットから一秒とかけずに取り出す。あとはこう叫べばいい。
「焼きソバパン、一つ!」

作者(敬称略) : 種原歩美奈 | ジャンル : ギャグ | コメント : 勝った者が強いのです。
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