いつもと違う放課後
わたしは東校舎の一番奥にある、ほとんど誰も使わない階段が好きです。なぜならその階段の踊り場の一カ所に大好きだった先輩の描いた絵が飾ってあるから。
2つ上だった先輩とはほんのちょっとだけしか一緒にいられなかったけど、自分の気持ちに気付くのが遅くて好きと言えなかったけど、あの場所に行くと先輩に会える気がするから…だからわたしは時間に余裕があるときは少し遠回りをしてその絵を眺めてから帰ります。
今日も踊り場へ足を向けていました。着いたとき、その光景をすぐには理解できませんでした。あまりにも唐突な出来事に頭が理解しません。いえ、理解しようとしなかったのかもしれません。絵は刃物か何かを使って切り裂かれていました。しばらく惚けたようにその絵を眺めていました。気が付くと歯を砕きかねないぐらい噛みしめ、握りしめた手は爪が掌に食い込み血がしたたり落ちていました。
許さない
わたしの復讐が始まりました。
作者(敬称略) : 白庵 | ジャンル : 現代 | コメント : 強い思いが裏返るとその思いも強いものです
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月夜の告白
深風は夜の学校の階段を足を止めることなく駆け上っていく。程なく最終地点、屋上への扉へとたどり着いた。一度立ち止まり、息を深く吸い込むとゆっくり扉を開く。
何もない殺風景な屋上、空には星のきらめきを打ち消すかのごとく真円の月が浮かんでいる。
少女が一人、降り注ぐ月光を纏うかのように佇んでいる。黒く長い髪が煌めきもう一つの空を作っているかのようだ。
深風の息の飲む音がはっきりと聞こえる。
「立花、君だったのか」
「霜月くん、やっぱりあなただったのね」
「君がここにいるということは…」
「そういうことよ」
短い会話。
「絵のモデル…楽しみだったわ、深風」
囁くように告げた立花に異変が起きる。すらりとした身体は黒い毛に覆われていき、手には禍々しいほど鋭く伸びた爪が生えていく。顔も人間のそれではなく狼の顔へと変わっていく。
そんな立花の変化を目の当たりにしながら、
「僕もだよ、飛鳥」
悲しそうに呟いた深風の左目が怪しく光る…
作者(敬称略) : 白庵 | ジャンル : ファンタジー | コメント : 最近の読書の影響が強くでてます…
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