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本当は・・・

「彼の爪の垢でも煎じて飲めばいいんだわ!」
彼女は階段の上から居丈高に僕に言い放った。
爪の垢を煎じて飲んだところで、絵がうまくなるはずもないのに。
僕は心の中でつぶやいたが言葉にはならなかった。
物理的な高度の差が彼女の威圧感を増したのだろうか。
普段ならボソリと飛び出す余計な一言は、今日はでなかった。
「…まぁ、いいわ。もう一回描いてちょうだい。部屋で待ってるから」
そう言い残すと彼女はツカツカと階段を上り、アトリエへと消えていった。
僕はほっと胸をなでおろした。
けど、また同じ絵を描くつもりだった。
何故って?
だって、そうすることで大好きな彼女の絵をもう一度描くことができるのだから。

作者(敬称略) : ロベルト | ジャンル : 恋愛 | コメント : 気弱で絵が好きな青年のお話です。
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