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戦は正義の名の下に

親愛なる真紀


日本ではもうそろそろ春でしょうか。早く地球に帰りたいです。

その後、怪我の調子はいかがですか?
あれから一年経ちますが、未だにあなたのことを忘れることができません。
あれだけの傷を負っても、「包帯マキマキ」と言ってのけるほどの、あなたの強さには驚かされました。
けれど、あなたの負った傷は、肉体的にも精神的にも痕を残してしまうものでしょう。

これが僕が正義だと思ってしていることなのです。
敵国人であれ、数え切れぬ人々をあなたと同じような境遇に追い込んできました。
できるなら、こんなことはやめて家に帰りたいです。

これから、また戦闘です。
スカラアゲ=ランチェ共和国の無敵宇宙艦隊は知っているでしょう。
そこにこれから突っ込んでゆくのです。地球を守るため、飛び交う砲弾の中で体がバラバラになっても戦います。
勝っても負けても、悲しみしか残りませんが。


生きて帰れたら、あなたが僕を殺してください。


義弘より

作者(敬称略) : あきら | ジャンル : シリアス | コメント : 800字を無理やり400字に
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最後の唐揚げ

学食で食べるからあげも、これが最後だと思うとなんだか不思議な気分だ。
はっきり言って好きではなかった。
衣が硬いのはともかく、肉が少ないのは許しがたかった。
石のように硬い衣の中に、肉が一ミリしか入っていなかったことさえあるのだ。

今考えれば、僕の短かった高校生活にも似ている。
そんなものに中身などない。
この三年間、バラのような華やかさも、棘の鋭ささえも何もなかった。


人の少ない学食。
包帯のように粗末なテーブルクロスに汚れた床。自動券売機にはつり銭切れのランプが灯っている。
あの券売機には何度苦労したことだろうか。
つり銭が出ないようにと、十円玉を大量に入れて頑張る人もいた。

彼女の後ろに並べばいつも、つり銭切れのランプは消えている。役に立つ人だと思った。



彼女は今、隣のテーブルに座っている。
これが高校生活最後の、一ミリの中身になるかもしれない。
最後の唐揚げを口に放り込むと、僕は彼女の座る席へと歩き始めた。

作者(敬称略) : あきら | ジャンル : 恋愛 | コメント : ちょっきりの額を入れれば、釣り銭切れでも買えるのです
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