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泥沼

「ヒロアキを返してよ、この泥棒猫!」

同じバーで働いているナツキが錯乱状態で私の家に駆け込んできた。
どうしよう、私がナツキの陰でヒロアキとこっそり会っているのがばれてしまったんだわ。
目の前のナツキは包丁を握っている。長い髪を振り乱し、恐ろしい形相をしている。
どうすればいいだろう。痴漢撃退用スプレーは二階に置きっぱなしだし‥‥
やっぱり警察に電話するしかないのかしら。
でもこんな場面、人に見られたくないわ‥‥

「親友だと思ってたのに‥‥あんたを刺して私も死ぬわ!」

じりじりとナツキは私のほうへ間合いを詰めてきた。
もうだめだ!
急いで携帯電話で110番をプッシュした。

「警察ですか!刺されそうなんです!早く来て!」

数分後、警官がやって来てナツキを取り押さえた。
でも、予想通り警官に好奇の視線を向けられる羽目になってしまった。

だから見られたくなかったのよね。ゲイバー勤めの二人が、男を奪い合って喧嘩してる所なんてさ。

作者(敬称略) : ポポ | ジャンル : その他 | コメント : 三角関係のごたごたです。
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