悪魔の囁き
『うちのねこ探してます』
買い物の帰り道で電信柱の張り紙に目を向けると、家の庭に数日前から現れる三毛猫の写真が載っている。それから『発見者の方には一万円差し上げます』の文字が視界に飛び込んできた。
僕は家に帰り、腕時計に目をやる。15時23分。そろそろ姿を見せる時間だ。
コンビニで買ったパンを齧っていると猫は現れた。いつものように僕は買ってきた缶詰を開けて食べさせる。
食べ終えると、猫は僕にじゃれついてきた。その時、猫の足がコンビニの袋にあたり、ヘアスプレーが地面に転がり落ちた。最近値上がりした愛用の物だ。
その時僕ははっとする。
このまま猫をかくまっていれば、懸賞金がそのうち上がるのではないか?
悪魔が僕に入れ知恵した。
天使が僕にそれは罪だと語りかける。
僕は悪魔に従った。
* * *
僕はテレビを見ていた。不意に家の電話が鳴る。
僕は受話器を上げる。
「もしもし石神井警察ですが、加藤隆太さんのお宅ですか?」
僕は息を呑んだ。
作者(敬称略) : 杉山 健二郎 | ジャンル : 現代 | コメント : 普通の少年の心に魔がさした瞬間
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