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お散歩

「さて、行ってくるよ。留守番よろしくな」
 あたしの頭に手を置きながら声をかけてくる。
「まぁ、猫のお前に言っても仕方ないか」
 自分のセリフに苦笑しながら出て行くご主人様。
 鍵が閉まり、階段を下りていく音を聞く。
 軽く息を吐き、前足を大きく突き出してぐっとひと伸び。
 そのままいつもの場所に行き、丸まって日向ぼっこ兼留守番の準備。
早く日が高くなってほしいわ…
 いきなり電話の音が部屋に響く。
うるさいわね…
 しばらくすると電話の音が止み、細かい振動音。
早く静かにならないかしら…
 軽い物が床に落ちる音。

 静寂

 薄く目を開くと床に文字の書かれた紙。
 ふと気になり、落ちた紙を上からのぞき込む。
 どうやらお店からのようね。
「日程が早まったから試作のヘアスプレーを持ってこい」
確か…
 首を回しテーブルの上に缶を確認。
黙考…
 缶の場所もご主人様の会社もわかる
…たまには遠くに散歩も悪くないわね
 缶は袋に入れて、首に下げる。
さてっ、行きましょうか

作者(敬称略) : 白庵 | ジャンル : 現代 | コメント : 日課のお留守番のはずが…
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